モダンランドナー

2017年になってジロ・デ・イタリアも終盤。最近自転車業界を賑わしている流行にランドナーというものがある。
ランドナーとは「日帰りから2-3泊程度の旅行向けの用途で使われる自転車」のことで、最近多くはクロモリフレームにスレッドステムといったクラシカルなスタイルの自転車を指すことが多い。

ランドナーの発祥は1950年代のサイクリングブームであり、今から70年も前のスタイルを今でも良いものとして継承している。
そのため、現在でもランドナーと呼ばれる自転車は当時のままのスタイルを美しいとしている風習がある。

はたしてクラシカルなスタイルのランドナーは旅に本当に適しているのか?

しかし本来の目的である「日帰りから2-3泊程度の旅行向けの用途」ということであれば70年も前の自転車が最適なはずがない。
例えば、クロモリフレームを選択する目的は過酷な旅の途中でフレームが折れたとしても街の鉄工所で溶接し直せるということらしいが、現代のランドナーでは入手が難しいパーツを使い、当時のスタイルを再現しようとしている。

そのためフレーム以外のトラブルが旅の途中で起こったとしても自転車屋に駆け込んだところで直せない可能性すら高くなっている。
よっぽど運よくビンテージパーツを大量に在庫している専門の自転車屋の前で故障する以外は原則自分で直せない故障はリタイアだ。

クラシカルなスタイルを継承するランドナーは今では旅のお供ではなくノスタルジックで不便な趣味自転車となってしまっている。

現代版の旅自転車、モダンランドナーを考える

ということで本来の目的を見失ってしまったランドナーを現代に再現するのではなく、ランドナーの本質である旅に最適な自転車を現代のテクノロージーで本気で考えるモダンランドナーを提唱したい。

フレームはクロモリからエンデュランス向けカーボンへ

では、どのような自転車が現在旅自転車として最適化を考える必要がある。
当然、フレームはクロモリではなく振動吸収性の高いカーボンフレームを選択することになるだろう。

クロモリフレームもアルミフレームと比較すると疲れにくいという傾向はあるが、最新のエンデュランス用カーボンフレームと比較すると500km以上の距離を走る前提となると雲泥の差だ。

ブレーキはカンチブレーキからディスクブレーキへ

またランドナーの定番ブレーキは泥がつまりにくいと言われているカンチブレーキが主流だが、それも時代遅れの産物。MTBのレースで使われている実績から考えても油圧ディスクブレーキの方が楽なことは乗った経験があれば素人でも明白だろう。そもそも日本を1周するとして未舗装路を走らなければならない場面があるだろうか?

コンポは見た目重視の昔のコンポではなく電動コンポを使うべき

またコンポも同様だ。ランドナーでは見た目のクラシカルさを最重要視するため、ダブルレバーで変速機を切り替えることが定番だ。
またランドナーではボスフリーとクラシカルなディレイラーを使うことが最優先となっており、酷い場合は7速のコンポを使うこともある。
これもブレーキと同様にSTIや電動コンポの方が旅に適している。長距離ライドで握力なんて使わない方が楽しい旅になるだろう。

タイヤは32Cのチューブラーではなく25C〜28C程度のクリンチャーが最適

ランドナーの定番タイヤ幅は32Cでチューブラータイヤを使用する。悪路でもパンクしない耐久性や走破性を考えたら悪くない選択肢だとは思うが、ブレーキの項でも記載したが、まず悪路が日本にほぼ存在しない。70年前とは道が違うのだ。

また当時主流だったチューブラータイヤを使うというのも悪しきノスタルジーでホームセンターで手軽に購入できるクリンチャータイヤを履いておくのが一番安心だろう。650Bなんてもってのほかでタイヤがバーストしたら、入手することは困難だ。

フレームバッグが豊富な現代にキャリアは不要

キャリアにパニアバッグを装着しなくとも現在は大容量のサドルバッグが多数販売されている。
大型のフロントバッグは地図を見ながら走るための必須アイテムであったが、スマートフォンがあればそれも不要だろう。

泥よけも晴天時に舗装路しか走らないなら不要

当たり前のようにランドナーには泥よけが付いているが、ピカピカの泥よけが錆びてしまうから雨の日は乗らないという。
2-3泊程度なら雨天延期してしまう勇気も必要だ。転倒して怪我をしてしまったら元も子もない。
また多少の雨であればアスファルトの上を走るのであれば泥よけはあってもなくても同じだろう。

ダイナモライトは愚の骨頂

ランドナーといえばダイナモライトが定番の装備だ。しかしダイナモライトは走行に当てる出力を発電に使う仕組みで動いているため同じ出力でペダリングした場合、当然進む距離は短くなる。安全面も考慮してUSB充電のLEDライトにしておくべきだろう。

現代のパーツを組み合わせればランドナーより旅に適した自転車が作れる

このようにランドナーは今となっては旅に適した自転車ではありません。クラシックカーでドライブに出かけるようなものです。
クラシックカーとキャンピングカーもしくはワンボックスカーのどちらの自動車での旅が快適化を考えれば同じこと。

自転車で旅をする=ランドナーではなく、本当に必要な装備はなんなのかを考えてから自転車を組むことが大事です。

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  1. 大間 より:

    古いタイプの「ランドナー」が
    現状ベターではないのはそうですが、
    幹線道路ばかり走るのではく
    旧街道や田舎の細道を走るなら
    アスファルトが痩せてざらざらになった道も多いので
    32mmタイヤは楽ですよ

    てか32mmのチューブラーがランドナーの定番って
    初めて目にしましたけど…

  2. master より:

    大間さん
    コメントありがとうございます。現代にランドナーというジャンルが存在していないなと思って書いた記事です。
    エンデュランスロード、シクロクロスやアドベンチャーロードなど色々ありますが、どれも当時のランドナーの目的と少し違っている様な気がしています。
    悪路を走ることが目的であればいいのですが、自分は貧脚なので太いタイヤは疲れてしまうんですよね。今は25Cのタイヤで1泊2日で300km〜400kmぐらいは走りますけどパンクが不安になったことはないですね。予備チューブ使ったら最寄りのホームセンターを探すという感じです。

  3. 大間 より:

    お返事ありがとうございます。
    私も貧脚ですが、路面からの振動で
    身体や主に腕が疲れないように太目のタイヤを好みます。
    今は太いタイヤでもラテックスやチューブレスで軽くできますし。

    > 今は25Cのタイヤで1泊2日で300km〜400kmぐらいは
    こういう旅なら幹線道路メインでしょうから
    25~28mmの細い軽いタイヤを選びます。

    といいつつ今つくってるのは
    650B*42mmでアスファルト走行メインのロングライドバイクですがw
    四国の山の中なんか、28cでもはまるグレーチングが多くて
    疲れて日が暮れてくるとうっかり落ちることがあるのと
    地図だけ見て面白そうな道をつないでルートどりするため、
    思わぬダートや路面整備が放棄されてる道にあうので。

  4. 通りすがりの三十路の意見 より:

    悪路が日本にほぼ存在しない。という前提はどうかなぁ、僕は走りましたよ悪路。旅自転車は荷物を付けて走れる中で最悪の路面を想定して造るべきだと思う、地図見て行ってみて道が悪いからってほかの道を探すのもモチベが下がりますから。でC規格ってことは700Cでしょその時点で現代ランドナーってよりスポルティフっぽいですよね。クリンチャーが最適なのは同意。
    キャリアは不要については旅のスタイルによりますよね。テントや銀マットやシュラフをフレームバッグに入れられるでしょうか?
    泥よけも晴天時に舗装路しか走らないなら不要とのことてすが、先ほども言いましたが旅用自転車は最悪の状況下を想定するべきです。でなければロードバイクで良いじゃない。
    ダイナモライトは愚の骨頂は同意、今はハブダイナモと言う素晴らしいものがあるのでそちらを使うか電池式の懐中電灯を2本持っていれば事は済みます、流石に電池の買えない町は無いですから。
    読んでて思ったのはランドナーよりロードで旅したほうが貴方は幸せになれるような気がします。短時間でガンガン走る人はランドナーは向いてません。ゆっくりノンビリ観光しながら走るならランドナー(現代に置いては違うと僕も思うが)は合っているのかなと、現代ランドナーならアラヤの出してるフェデラル辺りがカナリ良い線行ってると思う(新谷はフェデラルタイプという聞いたこと無いカテゴリーにしてるようだがギアとフロントフォークのダボが無い以外は良く出来てる)。

    1. master より:

      通りすがりの三十路さんコメントありがとうございます。
      自分の場合は悪路があったとしても、そのまま突っ切って1回パンクしたとしても700Cのチューブなんてホームセンターやイオン、あさひで簡単に入手できるのでそのために重いタイヤを履きたくないと思っています。
      テントやマット、シュラフも最近ではキャリアにいれずに走れますよ。
      ちょうどバイクパッキングがブームなので、今後もキャリアなしの積載量は増えるでしょう。
      悪路を選ばないとたどり着けない目的地が少ないというニュアンスで、存在しないは多少誇張しすぎたかもしれませんね。
      もちろん私も趣味としてのランドナーを否定するわけではありません。盆栽としてのランドナーの造形美は共感できるし、欲しいとも思いますが、100km以上の距離を走りたいとは思いません。
      ただ、友達が「2〜3泊の自転車旅をしたいから一台あつらえてくれ。予算は構わんよ」と言われたとしたらランドナーを勧めることはしないかなと思います。

      1. チャリツーリング部員 より:

        テントやシュラフ、着替え等をキャリア無しで運べるって本当ですか?
        もしそうならどのようにすれば良いのか教えていただきたいのですが。
        あとカーボンフレームに重い荷物を積んだら破断すると思うのですが、大丈夫なんでしょうか?

        1. master より:

          自分はキャンプはしないので詳しくないですが、バイクパッキングで検索してみてください。

  5. にわか高校生 より:

    大変素人の意見で恐縮ですが、100km走りたくないならそれはもうロードに乗るべきなのでは….
    二泊三泊する旅だったら100~200kmぐらい走るのではないでしょうか。

  6. サポネッタ より:

    読みましたが単純にスチールを否定することを前提に話を作ったバックボーンが見えてきます。勿論スチールが全ての項目に優っているとも言えませんが振動吸収や粘り、また耐久性はカーボンと評価するまでもないモノです。またサイズに関しては書かれていませんが吊るししかないカーボンを無理な姿勢で乗るよりカスタムオーダーで作るスチールに利点があるのも明らかです。
    最新が最善はあくまでもマーケティングマジックで多くの人が本質を見抜く事なく騙されている可能性も考えなければいけません。

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